チャート分析のキホン

株・FXで使える「ダウ理論」。実はシンプルな6つの基本原則

株やFXなどの相場動向を分析する手法には、大きく分けて「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」の2種類があります。
この2つの手法の考え方や長所・欠点は過去のエントリーで解説しています。

今回は、テクニカル分析の基本になる「ダウ理論」についての話題です。

「理論」とついているだけに難解なイメージですが、実は“6カ条”的な基本原則を知っておけば済む話。
この記事を読んでサクっと覚えてしまいましょう。

どんな理論なのか

ダウ理論の創始者は、19世紀後半に活躍したチャールズ・ダウ。
名前でピンと来る人もいると思いますが、この方は「ダウ・ジョーンズ」の共同創設者で、「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」の創刊編集長でもある人物です。

株式市場は経済全体の状況を把握できる信頼性の高い指標であり、マーケット全体を分析することで市場全体、個別株のトレンドを見分けることができる。

彼はWSJの社説上で、このような理論を展開。
自身が著作を残すことはありませんでしたが、ダウの後進たちは社説をベースに理論を発展させ、現在の形が出来上がりました。

6つの基本原則

ダウ理論には、下のスライドに示す6つの基本原則があります。
Wikiなどでは小難しい日本語が使われていたので、若干アレンジをしています。

ダウ理論の基本原則

では、それぞれの原則について見ていきましょう。

1. マーケットは全てを織り込む

相場(特にダウ平均など複数銘柄の“平均値”)には「ファンダメンタルズ的な要因」がまるっと反映されているという教えです。
価格に織り込まれる要素は、企業の稼ぐ力や競合優位性、さらには未来のリスクまで「全て」が含まれているというから凄い話です。

個人的には「本当か?」と思わないでもありません。

しかしこの原則は、以後のテクニカル分析の前提中の前提。

投資の世界では「光あれ」ぐらいの重要ワードと言っていいでしょう。

2. 主なトレンドは3種類ある

相場が上昇/下落していく周期は短期・中期・長期に分類されるという原則です。
期間は以下の通り。

長期 1年以上
中期 3週間~3カ月
短期 3週間未満

ダウ理論では、長期トレンドが相場の値動きの基本で、中期はその調整局面。

短期トレンドは「ノイズ」とされており、その値動きにとらわれることが損失の原因にもなるとも注意喚起されています。

イメージはこのような感じです。

3種類のトレンド

「中期」だけ見ると下落が永遠に続きそうな雰囲気ですが、長期的には上げすぎた反動で売りが一時的に強くなった局面に過ぎないことが分かります。

短期に至っては、切り取る場所によって何とでも解釈できてしまいそうなので、やはりトレンドの信頼性としては高くないといえます。

3. 長期トレンドは3段階からなる

見出しでは「長期」としていますが、短期的な相場でも当てはまることが多いです(個人の感想です)。
この原則では投資家の動向にフォーカスし、3段階でトレンドが成り立っているとしています。

先行期(第1段階) 一部の投資家がトレンド転換を見越して「買い」または「売り」を始める時期
追随期(第2段階) トレンド転換が明らかになり、多くの投資家が参入する時期。急騰・急落が生じやすい。テクニカル分析を実践している投資家は主に、この追随期で利益を出している
利食い期(第3段階) 投資家以外にも相場の上昇または下落が知られるようになり、投資初心者も参入してくる。先行期・追随期に参入した投資家はポジションを既に解消しており、価格の上昇や下落はストップ。トレンドは終わりを迎える

値動きのイメージはこちら。

トレンドの3段階

「頭と尻尾はくれてやれ」という相場格言がありますが、この言葉は追随期で利益を出そうという、ダウ理論に基づいたメッセージといえるでしょう。



4. 指数は相互の確認が必要である

ちょっと何言ってるか分かりにくいですが、イメージとしては「日経平均を分析するならダウ平均も見ましょう」ということ。
日経平均が上昇トレンドであってもダウ平均が上昇トレンドでない場合、「それは本当のトレンドではない」とする教えです。

この原則は、当時の工業株と運輸株の指数をベースにして作られたもの。
産業規模がケタ違いになった現在では当てはまりにくいですが、広い視点で相場を見ることの重要性を伝える原則として理解しておけば良いでしょう。

5. トレンドは出来高でも確認する必要がある

経済ニュースでは「本日の日経平均株価は出来高を伴って上昇しました」と伝えられることが多いと思います。
ダウ理論では、相場を見るときは価格だけでなく出来高、つまり取引されている量の重要性も強調されています。

特にトレンドが変わるときは出来高も増える傾向がありますので、シンプルながら意識しておきたい原則です。

6. 明確な転換シグナルが出るまでトレンドは続く

実際のトレードで最も役立つ原則です。

トレンド転換シグナル

上昇トレンドはスライド左半分の動きのように、高値・安値のどちらも切り上がる動きを見せます。
下落トレンドはその反対。スライド右半分の値動きのように、高値と安値がともに切り下がっていきます。

上記に挙げたパターンが崩れたとき、1つのトレンドは転換期を迎えます。
小さくピンク色で示した箇所がそれに当たりますが、ここはまだ明確な転換というには不十分。
次の高値がどうなるのか確認できていません。

「トレンド転換した」と言い切れるのは赤のエリアです。

それは、トレンド崩れ後の高値が

最高値を超えていない
最高値の前の安値も下回っている

この条件が揃ったからです。

実際の相場では、上昇トレンドの序盤で利益を確定してしまったり、上昇トレンド崩れのポイントで買い向かってしまったりという「しくじり」はよくある話。

この原則を忘れないでおけば避けられる悲劇です。

おわりに

今回は、ダウ理論の基本原則6つをご紹介しました。

「理論」というほど難しいものはなかったかと思いますが、

トレンドは3段階(先行期・追随期・利食い期)

転換シグナルが出るまでトレンドは継続する

この2つはすぐに相場に生かせる原則なので、確実に押さえておいてください。