株やFXの取引をするとき、何を「根拠」に投資判断をしていますか?
後者は情報収集をしているだけマシな印象もありますが、最終的には“勘トレ”になっています(私がよくやるパターンです・・・)。
せっかく集めた情報を投資成績アップにつなげるには、もうひと工夫が必要です。
今回は自戒も込めたエントリーということで、投資判断のための2つの手法「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」の考え方や特徴について解説します。
※投資判断にはもう1つ「アノマリー」という考え方も使われますが、これは「テレビでジブリ映画が放映される日は株が下がる」といったジンクスのようなものなので、今回は取り上げていません。
「ファンダメンタルズ分析」「テクニカル分析」とは?
いきなりですが、クイズです。
「麻呂エモン」という著名人がロケットの打ち上げを計画しています。成功するでしょうか?

この情報だけでは、「麻呂エモン」という人物の好き嫌いで成功・失敗を予想しなければなりません。
これは株でいう「好きな会社だから買う」のと同じこと。
もうちょっと判断材料が欲しいところです。
実力か、過去のパターンか
「好きな会社だから買う」から一歩踏み出す方法、それが「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」です。
この2つ、考え方はまるっきり違います。
先ほどのロケットの例で説明します。

ファンダメンタルズ分析では、「麻呂エモン」のロケットの性能や打ち上げ場所の立地、あるいは当日の天気など、分析対象の実力や外部環境といった要素が予測に役立てられます。
一方のテクニカル分析で材料になるのは、成功か失敗かという過去の結果だけ。そこから何らかの「パターン」が見られた場合には、同じことが未来にも繰り返されるという発想です。
テクニカル分析の用語は取っつきにくい言葉が多いですが、原理は極めてシンプルです。
どちらの手法が優れている?
投資の世界では、このようなテーマがよく議論されます。
答えは二択ではありません。
両方の要素を考慮すれば、予測の精度は高まります。
ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析の大枠が整理できたところで、下手な例えは終わりです。
次のパートでは、相場における「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」の概要を大づかみでご紹介します。
ファンダメンタルズ分析
ファンダメンタルズ分析では、株なら「会社」、為替なら「通貨」の実力と今後の見通しを評価し、現在価格が「割高」か「割安」かを判断します。
何を見ているのか
投資対象が株の場合
企業の業績・財務状況を中心に評価します。精度の高い分析には、対象になる企業だけでなく、ライバル企業の動向や業種レベルの将来性も加味することが求められます。
【主な指標】PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、ROE(株式資本利益率)など
投資対象が通貨の場合
国の景気や金融政策などから、経済的な「国力」を評価します。
【主な指標】GDP、政策金利、物価指数、失業率など
その他の材料
上に挙げた要素はファンダメンタルズ分析の基本になりますが、これらに影響を与えそうな要人発言や突発的なニュースも相場の変動要因になります。
【主な材料】金融界のキーパーソンや政治家などの要人発言、テロ・戦争、気候変動など
ここでひとつ、注意です。
「センチメント」との切り分け
突発的ニュースによる暴騰・暴落が「ファンダメンタルズの変化」か「センチメントの変化」かを見極めよう
落ち着いていた相場が、1つのニュースで急変することがあります。
突発的なニュースはざっくりと「ファンダメンタルズ」でまとめられることも多いのですが、実はファンダメンタルズとは関係ないものもあります。
それが市場心理を意味する「センチメント」です。
簡単に言うと、「なにそれ怖い」ということです。
下記の2つの出来事から、その違いが分かります。
A. 日銀が金融緩和政策を発表し、直後から日経平均は大幅上昇した
B. 英国の国民投票でEU離脱が決まり、ダウ平均株価は暴落した
Aは金融政策の変更という、まさにファンダメンタルズの根幹に関わるニュースで相場は大きく動きました。その後数年間続く「アベノミクス」のはじまりです。
Bは将来的にファンダメンタルズの変化をもたらす可能性が残りますが、投票直後にはまだ何も起こっていません。「やばくない?」という投資家心理だけが相場に変動をもたらしたのです。
また、若干ややこしいですが、2つの関係性はこのようなものです。
- ファンダメンタルズの変化はセンチメントにも影響する
- センチメントは直接的にファンダメンタルズを変化させない
相場への影響もこのように違います。
- ファンダメンタルズの変化で動いた相場は戻ってこない
- センチメントの変化で動いた相場は戻ってくる
これはけっこう、実用的な法則です。
長所と欠点
最後に、ファンダメンタルズ分析の長所と欠点を以下に挙げます。
長所
- 投資対象の「本質」を把握できる
- 短期の仕掛け的な値動きに翻弄されない
欠点
- 分析が大変(幅広い知識が必要)
- 解釈が難しい(例:コロナなのに株は高騰)
欠点の方はなかなかクリティカルです。
どこまでの情報を集めればいいのか、そして集めた情報たちが価格にそれぞれ何パーセントぐらい影響しているのか、具体的な正解はありません。
それでもやはり、ファンダメンタルズ分析は「本質」に迫る手法。
精密な分析はできないにしても、自分なりに幅広く情報を集めて独自に解釈しておくことは大きな意味があります。
テクニカル分析
テクニカル分析では、過去の株価や為替レートといった「価格」、そして取引された量を示す「出来高」を材料にして、将来の値動きを予想します。
代表的な分類
トレンド系
相場のトレンド、つまり方向感をつかむための分析手法です。
【主な指標】移動平均線、一目均衡表、ボリンジャーバンド、パラボリックなど
オシレーター系
「買われすぎ」「売られすぎ」など、相場の過熱感をはかる手法。主に逆張りのタイミングを探るときに役立ちます。
【主な指標】RSI、MACD、ストキャスティクスなど
今や大半の証券会社やFX会社が、テクニカル分析のためのツールを提供しています。
そのため、口座を開けばすぐにでも、プロ投資家と遜色ない分析が可能な環境は整っています。
けれども、数ある分析指標について理解し、ツールを使いこなすのは至難の業。
最初はデモ取引で使い方に慣れることをオススメしたいと思います。
もし、すぐにテクニカル分析ツールを使ってリアル取引をしたい場合は、以下のポイントを参考にしてください。
テクニカル分析では「トレンド系」と「オシレーター系」を組み合わせよう
これによって、方向感が上か下かを見極め、その流れが継続するかストップするかを判断することができます。
私個人の感想ですが、組み合わせるだけでもずいぶん変わります。
長所と欠点
最後にテクニカル分析の長所と欠点です。
長所
- 基本的にはどんな投資商品にも応用が可能
- ツールさえ使えれば分析手法への深い理解は不要
欠点
- ファンダメンタルズ要因の出来事があると機能しないことがある
- 分析結果が「ダマシ」のことがある
テクニカル分析の最大のメリットは、汎用性と簡便性。
チャートを見て強いシグナルさえ出ていれば、深い企業分析など必要ありません。
「ラクしすぎじゃない?」とも思えるけれど、それでソコソコの結果が出てしまうのがテクニカル分析の魅力です。
その一方で、「過信は禁物」というのもテクニカル分析の真実。
レンジを抜けたと判断して、天井でジャンピングキャッチしてしまったという経験は一度や二度ではありません。
おわりに
今回は「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」の考え方や、それぞれの概要について解説しました。
最後に1点、大事なポイントをお伝えし忘れていました。
このスライドです。

それぞれの分析手法の効果は、期間によって変わってきます。
短期トレードならテクニカル分析が優位。
中長期ならファンダメンタルズ分析が威力を発揮します。
とはいえ、仮にド短期のトレードであっても、ファンダメンタルズ要因は全く考慮しなくて良いということにはなりません。
ぜひ「注文」ボタンを押す前に、頭の片隅で「ファンダOK、テクニカルOK」と指差し確認的に意識する習慣をつけていただきたいと思います。