チャート分析のキホン

【徹底ガイド】移動平均線の意味と株・FXで使える実践テクニック

証券会社やFX取扱業者では、テクニカル分析のためのツールを数多く提供しています。
その中で、仮に1つの指標しか使えないとしたら移動平均線を選ぶ人は多いのではないでしょうか。

そこで今回は、テクニカル分析指標の絶対王者ともいえる移動平均線にフォーカスし、その特徴や実践テクニックまで解説します。

移動平均線はどんな指標?

移動平均線をひと言で表現すると「一定期間の平均値の推移を線で示したもの」となります。
正直、言葉だけでは分かりにくいです。

ということで、表とグラフを使って説明していきます。
まずは、この価格の推移をご覧ください。

最初は20円だったものが翌日には150円、その後も上昇と下落を繰り返しています。
価格だけを見ていると、相場に参加しても上下に振り回されるだけで終わってしまいそうです。

ということで、この価格を「ならす」作業をしてみます。
今回はシンプルに、過去5日分の価格の平均値を出します。

・1-5日目の価格を平均→72円
・2-6日目の価格を平均→72円
・3-7日目の価格を平均→62円
・4-8日目の価格を平均→62円
・5-9日目の価格を平均→64円

次に、この数字を先ほどのグラフに乗せてみます。

するとどうでしょう。
ジグザグな値動きに見えていたものが、平均すると60-70円の価格帯におさまっていることが分かりました。
この傾向が続くなら、30円ぐらいになれば買い、100円を超えたあたりで売れば無限に利益が得られそうです。

このように、移動平均線は変動するデータを「ならす」ときに使うツールで、トレンドの見極めに役立てることができます。
もちろん活用法は他にもありますが、これが移動平均線の基本です。

性格は「見る期間」で変わる

先ほどの例では1日ごとのデータを使って、過去5日間の平均値を出しました。

移動平均線を使ったテクニカル分析では、大きく分けて短期・中期・長期の線が使われます。
実際のチャートで表示すると、下記のスライドのようになります。

紫色が5日線で、振り幅は比較的大きいことが分かると思います。
これに対して20日線はスムーズな線になり、200日線ともなれば直線に近い形が見て取れます。
異性との付き合いに似ているのかもしれませんが、移動平均線も期間が長くなればなるほど“こなれた感じ”になってくるものです。

ともあれ、移動平均線は見る期間によって微妙に性格が違います。

短期の移動平均線はトレンドの変化を鋭敏に捉えることができる一方で、誤ったシグナルが出ることが多いという欠点があります。
対照的に、長期の移動平均線は短期トレンドの転換を捉えにくい欠点があるものの、示されるシグナルは強力です。

例えば上のスライドの200日線からは、「着実な上昇トレンドで、200日線を下回るような事態はそうそう起こりにくい」ということが分かります。

移動平均線の期間は各種ツールで任意に変更できますが、意外と迷うのが「どの期間がベスト?」という点です。

経験上、デフォルトでは「5日/25日/75日」に設定されていることが多いと感じていますが、個人的には週/月/年の平均が分かる「5日/20日/200日」が好きです。

こればかりは最初から正解は出しにくいので、いろいろな期間の線を表示させてみて、自分に合いそうな設定を探してみてください。

移動平均線の種類

移動平均線は、それ自体にもいくつかの種類があります。

先ほどの例で作成したものは、単純に平均値を計算しただけなので「単純移動平均線(SMA)」と呼ばれています。

SMAは最もポピュラーな移動平均線として多くのトレーダーに使われていますが、その他にも「加重移動平均線(WMA)」「指数平滑移動平均線(EMA)」という指標があります。
これらは直近の価格に比重を置いた計算方法を採用しており、比較的短期間のトレードに向いているという特徴があります。

移動平均線の「呼び方問題」

日足で移動平均を見るときは「5日線」「20日線」などとスンナリ呼べますが、1時間足や5分足などではどう呼べば良いでしょう?

「ご・・・1時間足?」

なんてことになるとややこしいので、日足以外は移動平均線の英語「Moving Average」から取った略語の「MA」を使います。

例えば時間足で5時間分の移動平均線は「時間足の5MA」となります。



移動平均線から相場心理を読み取る

移動平均線と価格を照らし合わせると、現在の相場の勢いを判断することもできます。

スライド左のように、移動平均線が上向きで価格がその上にある場合は強気相場です。これに対して、スライド右のように移動平均線が下、価格も下なら弱気と判断できます。

勢いを判断できる理由は2つあります。

1つは移動平均線の向きです。
その都度出るローソク足は陽線・陰線が入り乱れていても、平均値がジワジワと上昇しているということは、高値と安値を切り上げていくトレンドが形成されていることを意味しています。

そして2つ目は、価格と移動平均線の位置関係です。
例えば5日分の平均線よりも価格が下にあれば「過去5日間に買った人の半分以上が含み損を抱えている」ことを意味します。
買ってすぐに価格が下落した場合、さらなる下落に対する恐れが出てくるものです。
この恐怖心を半数以上の人が味わっている場合、損切りのプレッシャーが増大してきますので、市場心理はマイナス方向に向かうことになります。

このように、移動平均線の向き、そして価格の位置関係から市場心理を伺い知ることもできるのです。

「ゴールデンクロス」「デッドクロス」は成立条件に注意

ここからは、移動平均線を使った売買シグナルを紹介していきます。

ゴールデンクロス」「デッドクロス」というワードは株やFXをしていない人でも、もしかしたら耳にしたことがあるかもしれません。

これらは短期線と長期線(or中期線)の2本の組み合わせで判断されるシグナルで、字面通り「ゴールデンクロス」は買い、「デッドクロス」は売りを示唆しています。

画にすると下記のような形です。

短期線が長期線(or中期線)を下から上に抜けば「ゴールデンクロス」、上から下が「デッドクロス」。
これは分かりやすいと思います。

ただし1点、重要な注意があります。

長期線と短期線がクロスすれば、どんなシチュエーションでもOKというわけではありません。

ゴールデンクロスを例に挙げると、
移動平均が下向きだった
長期線(or中期線)が横ばいか上向きになった
この2点を満たしていることが重要です。

つまり、ゴールデンクロスは基本的に、下落トレンドから上昇トレンドに転換するときのシグナルとして把握していくことが重要になります。

また、線の向きはシグナルの信頼度と関係があります。
分かる人は分かると思いますが、2本とも上向きなら「緑~赤」、下向きなら「青」ぐらいのレベル感と捉えておいてください(金とかキリン柄ほどではないと思っています)。



図解・グランビルの法則

移動平均線を使ったトレード手法として、もう1つ有名なのが「グランビルの法則」です。
これは米国のジョセフ・グランビル氏が編み出した手法で、移動平均線と価格の変動パターンから、以後の相場の方向性を読み取ろうというものです。

グランビルの法則は合計8パターンあり、「買い」と「売り」のシグナルが各4パターンという構成です。
非常に分かりやすい法則なので、スライドで見ていきたいと思います。

まずは買いシグナル4パターンです。

買い① 【移動平均線:横or上】価格が下から上に抜けた(買い)
買い② 【移動平均線:上】価格が移動平均線を下回ったが速やかに上昇した(押し目買い)
買い③ 【移動平均線:上】価格が上から下に向かったが、移動平均線の手前でリバウンドした(買い増し)
買い④ 【移動平均線:下】価格が下落して移動平均線と乖離した(短期リバウンド狙い)

続けて売りシグナル4パターン。
買いシグナルと逆です。

売り① 【移動平均線:横or下】価格が上から下に抜けた(売り)
売り① 【移動平均線:下】価格が移動平均線を上回ったが速やかに下落した(戻り売り)
売り① 【移動平均線:下】価格が下から上に向かったが、移動平均線は上抜けず下落した(売り増し)
売り① 【移動平均線:上】価格が上昇して移動平均線と乖離した(短期売り狙い)


この法則は「200日線」を使ったトレードを念頭に考案されたものですが、相場のスピードが格段に上がった現在では、より短期のチャートにも応用できるとされています。

ただ、テクニカル分析の本質として、短期のチャートはノイズが多いという欠点がありますので、FX等で使うときは「ダマシ」の可能性も考慮して使うことが重要になるでしょう。

おわりに

今回は、移動平均線の基本から実践テクニックまで、グラフ多めでご紹介しました。

移動平均線は「知ってるつもり」で使うと間違ったシグナルを受け取ってしまうこともありますので、基本をガッチリと押さえていただきたいと思います。