株・FXのはじめかた

下落相場で利益を出す方法5選

2020年終盤の株式市場は、コロナ後の景気回復期待や各国の緩和政策などを受けて絶好調。
ダウ平均とナスダックは史上最高値を更新し、日経平均もバブル後最高値の水準を更新し続けています。

今年春の暴落で仕込めた人は別ですが、あまりに急ピッチな回復相場に乗り遅れてしまい、「今からは買いにくい!」という人もいるかと思います。
そこで今回は、いつか必ずやってくる下落局面に備え、上げ相場でなくても利益を出せる5つの方法をピックアップ。それぞれの手法の注意点もあわせて解説します。

現物株の空売り

下落局面で利益を出すポピュラーな方法が、現物株の空売りです。
その仕組みは以下の通りです。
1. 証券会社から借りた株を売る
2. 後日あらためて株を買って返済する
3. 差額が投資家の利益(or損失)になる。

空売りは信用取引の1つの形態で、「信用売り」とも呼ばれています。
その言葉通り、一定の信用がある投資家に認められる取引なので、通常の証券口座とは別に「信用口座」を開設する必要があります。

信用口座の開設には審査が必要。
一般的には①信用取引の経験または一定期間の株式投資経験、②投資資金に余裕があるor定期収入があるーといった条件をクリアすることが求められます。

また、空売りは証券会社から株を借りる取引なので、通常のコストとは別に利息がかかります。これは「貸株料」と呼ばれ、信用取引の種類(制度信用/一般信用)によって金利が異なります。
さらに制度信用では、場合によって「逆日歩」と呼ばれる株の調達コストが発生することがあります。

利益は限定的、損失は青天井!

空売りで生じる利益は限定的です。

例えば株価が1万円のときに100株を空売りした場合、売値は100万円になります。
これを買い戻すときの価格が0円でも、利益は100万円です。

つまり理論上のMAXで儲かったとしても、利益は原資の2倍にとどまります。

そんな利益とは逆に、損失が出る場合は青天井
株価が1万円のときに100株を売り、2万円になれば損失は100万円。
これが5万円、10万円となると・・・、MAXの利益をはるかに超える損失が出てしまいます。

相場格言に「買いは家まで、売りは命まで」という言葉がありますが、これは空売りへの注意喚起です。
加えて持ち続けるほど利子を払う必要があるので、空売りの基本は短期決戦。
早めの損切りこそが、空売りで命を取られないための秘訣です。

インバースETF

ETFは上場された投資信託のことで、日経平均などの株価指数を丸ごと取引できる商品です。
その概要は下記エントリーにまとめているので、こちらも参考にしてください。

「日銀買い」だけじゃない!明日にも始めたくなるETFのハナシ「日銀は●日の東京株式市場で、従来型のETFを●億円買い入れた」 経済ニュースでは、毎日このような報道が出てきます。 けれどもこ...

ETFは現物株と同じように空売りが可能ですが、下落で利益を出したいときのオススメはインバースETFです。

インバースとは日本語で「逆」の意味。
つまり取引する株価指数と逆の値動きをするのが特徴です。
例えば「日経平均インバースETF」は、日経平均が1%上がったときに1%下落し、1%下落すると1%上昇するように設計されています。

また、インバースETFにはレバレッジ型も存在していて、株価指数が1%下落するとETF価格が2%上昇する「ダブルインバース」といった商品もあります。

減価に注意

インバースETFは、株価指数が上昇と下落を繰り返す相場や、上昇が続いた後に価格が元に戻る相場の場合、株価指数が±0であってもETF価格は安くなっている場合があります。
これは株価指数の「価格」ではなく「変動率」と連動する仕組みのために起こる現象です。

こうした特性は「減価」と呼ばれていて、インバースETFの主なデメリットに挙げられます。
減価はインバースETFを長期に保有するほど大きくなる傾向があるので、ポジションは長くても2~3カ月程度で手じまいするイメージが良いと思います。

一方、減価が起こるのは先に挙げた相場の場合だけ。
下落が続くような環境であれば、株価指数の変動よりも大きな利益を得られる可能性がある点は付け加えておきます。

先物売り

先物取引は少額の証拠金で大きな金額を動かせる取引の代表格。
日経平均株価の下落で利益を出したい場合には、「売建」で注文すればOKです。

昨今の株価高騰で証拠金は上がっていますが、日経225の「ミニ」であれば1枚15万円弱で取引することが可能です。

日経225ミニの場合、損益は日経平均株価の値動きの100倍
つまり日経平均株価が100円下落すれば、1万円の利益になります。

また、先物は取引できる期間(限月)が決まっていることも大きな特徴で、はじめから長期的な取引が排除されている点は頭に入れておく必要があります。

逆行したときの損失は壊滅的

上述したように、日経225は比較的始めやすいといわれているミニでも、損益は日経平均株価の100倍です。
本日(12/29)のように700円も上昇してしまうと、最小単位でも1日で7万円の損失になります。

つまり、逆を行かれると差し入れた証拠金の半分近くが一度に持って行かれるレベルなので、このリスクを許容できない人は触らない方が良いでしょう。

プットオプション

オプション取引とは、「ある資産」を「ある期日まで」に「ある価格」で売買する「権利」の取引です。
これだけでは少し分かりにくいと思います。

「PS5」を「1月10日まで」に「4万円」で「買う権利」が1,000円

このように例えると、この「権利」を買いたいと思う人がいるかと思います。

日経平均株価のオプションも先ほどの例えと同じように、「日経平均株価を3月までに3万円で買う権利」などに価格が付いて市場で売買されています。

オプションには大きく2種類あり、上記のような「買う権利」は「コールオプション」と呼ばれ、反対に「売る権利」は「プットオプション」と呼ばれます。

下落相場での利益を狙うときには、このうちプットオプションを買うことになります。

プットオプションでの利益の出し方は2種類。
現在、3/11に取引最終日を迎える「日経平均株価を25,000円で売る権利」の価格(「プレミアム」といいます)は245円でしたが、この後に下落相場を迎えてオプション価格が上がったときに売ることで利益を出す方法が1つ。
もう1つは取引最終日の精算を待って、日経平均株価が24,755円よりも下だった場合は、その差額×1,000円が利益になります。

プレミアムの価格については少し複雑なので、別の機会に解説します。

絶対ダメ!オプションの売り

下落相場で利益を出す手法のうち、失敗したときのダメージが最も大きいのがオプションの「売り」です。

オプション売りは平時に限っては、比較的安定して利益を出せる手法です。
現在の日経平均は27,000円台で推移していますが、ここからすぐに数千円も上昇することはなさそうです。
そこで1/7に満期を迎える30,000円のコールを見てみると、現在3~4円になっています。
これを10枚売っておき、無事に満期を迎えると3~4万円の利益になります。

そこまでの暴騰は余程のことがなければ起こらないので、このように価格が離れたオプション売りの「勝率」自体は高いです。
ですが、100回や1,000回勝ったとしても、たった1回の負けで自己資金をはるかに超える損失が出るのもオプション売りの怖いところ。

数万円の利益を得るために数千万の損失を背負ってしまった・・・という失敗はあまりに切なすぎるので、オプションを触るときは「売り厳禁」というルールを徹底しておくことをおすすめします。

CFDの売り

CFDは「Contract For Difference(差金決済取引)」の略称で、FXも同じくくりに入ります。

他の手法と大きく違う点は、FXと同じように24時間取引が可能なところ。
また、レバレッジは10倍のケースが多いので、リスクの度合いとしては信用売り/ダブルインバースETFと先物売りの中間的なポジションに位置づけられます。

加えて売買手数料は基本的に無料なので、取引コストの点でもメリットがあります。

例えば日経平均株価の下落を予想する場合、DMM CFDであれば「JPN225/JPY」を売りでエントリーすればOK。
これまでFXをやっている人であれば、同じ感覚で取引できると思います。

適切な資産管理が必要

FXと同様に、CFDもまたレバレッジをかけて取引する商品。
株価指数は金融政策の変更や国の財政政策などで大きく上昇することがあるので、常にMAXのレバレッジをかけていると、証拠金をしのぐ損失が出るリスクがあります。

どの手法でも言えることですが、CFDもやはり最も重要な注意点は「資産管理を適切に!」ということです。

おわりに

今回は、相場の下落局面で利益を出す方法と注意点をご紹介しました。

最後に1つ、メンタル的な注意点を2つ挙げます。

1.クセにならないようにする
下落で利益の出るポジションを持っていたときに「○○ショック」的な暴落が来ると、けっこうな勢いで利益が出ます。
これが当たると、買いでじっくりと利益を出す手法が退屈に感じられ、自分のトレードが売り中心に傾いてしまいがちなので注意が必要です。

2. 悪いニュースに過剰反応するようにならない

自分のトレードが売り傾向になってくると、どうしても悪いニュースを期待するようになります。
そのこと自体の倫理的な問題は置いておくとしても、「ニュース」というものの性質は良く考えておく必要があります。

メディアは良いニュースよりも悪いニュースを好む傾向があるため、私たちは必然的に悪いニュースを多く目にします。

そうなると、無意識に「世の中は悪くなっている」という思考に陥り、ついつい下落相場に賭けてしまうことになります。

既に上記のような先入観を持ってしまっている人は、ぜひ一度『ファクトフルネス』をお読みください。
きっと目からウロコの感覚になれると思います。