すでに株やFXをやっている人は、掲示板などでこんな言葉を目にしたことがあると思います。
ここで出てくる三尊、三空叩き込みという言葉は、「酒田五法」というチャート分析法に基づくローソク足のパターンです。
ローソク足の基本は過去のエントリーでご紹介した通り。

今回はいよいよ実践的な内容ということで、酒田五法のポイントを分かりやすく解説します。
酒田五法とは
まずは酒田五法の由来と実用性について解説します。
考えた人は?
定説では、本間宗久という江戸時代の米商人が酒田五法を考案したといわれています。
彼の生きた時代は1700年代。
江戸のバブル時代にあたる元禄が終わり、世の中は「失われた20年」さながらの長いデフレに突入。人口の増加もこの時期にストップしました。
現在の日本に似た世相の中、本間宗久は米相場に活路を見出します。
といってもこの人、もとより金持ちの三男坊。
アメリカンドリーム的な立身出世物語ではなく、思春期に江戸へ行ったら米相場の魅力にハマってしまい、その後は失敗をしながら最終的には巨万の富を得たというお話です。
そのときに使ったテクニックというのが、この酒田五法。
「酒田」は本間宗久の地元である山形県酒田市にちなんでおり、基本テクニックが5つなので「五法」です。
全く関係ありませんが、本間宗久は享保生まれ。あの徳川吉宗の時代です。
吉宗にが「大盤振る舞い」のイメージを持っている人がいるかと思いますが、この機会に改めておきましょう。
実は享保の改革で財政再建政策を断行した「超緊縮派」の将軍です。
どんなテクニック?
ローソク足の組み合わせのパターンから、次の相場展開が上昇・下落のどちらに進むかを予測します。
これは他の分析手法にも共通することですが、1本1本のローソク足は、相場参加者の集団的心理が反映されたものです。
一人一人の投資家はバラバラの性格なので、相場の流れに沿って売り買いをする人がいれば、流れに逆らったトレードが好きな人もいます。
ローソク足はいわば、その1人1人が集まったときの「総合的なムード」を見える化したものです。
特に相場というものは、人間の「欲」が集まった存在。振り幅の大きな感情は比較的見えやすく、パターン化も容易です。
酒田五法では、このような投資家心理の動きのうち、最も分かりやすい5つのパターンを基本にして、「次の相場はだいたいこうなるよ」という指針を示してくれるのです。
今でも役に立つ?
酒田五法に従えば必ず勝てる、なんてことはありません。
ただし、知っておけば役に立ちます。これは絶対です。
前述の通り、酒田五法は相場参加者の集団的心理をパターン化したものです。
江戸だろうが令和だろうが、お金の欲しい人間の感情の動きはそう変わるものではありません。
これが現代でも有用と考える理由の1つ。まだあります。
特に日本では、かなり多くの投資家が酒田五法を知っています。これが重要です。
酒田五法で示されたパターンが出現すると、大勢が「キタコレ」と思うわけです。
するとどうなるのか。
例えば三尊が出現したら、「次は下落しそう」というシグナルを意識せずにはいられなくなります。酒田五法を信頼していようといまいと、その知識が無意識的な圧力になり、投資判断に少なからず影響を及ぼすことになるのです。
ジャンケンを例に挙げると、「頭で考えてジャンケンをしようとする人はチョキを出す」というパターンがあります。
これを相手に先に伝えた場合、何が起こるでしょうか?
少なくとも私はノープランでジャンケンをするよりも少し勝率が上がる気がします。
では、分かりづらい例えは止めて本題に入ります。
酒田五法の5つのパターン
酒田五法は5つのパターンから構成されています。
- 三山 さんざん
- 三川 さんせん
- 三空 さんくう
- 三兵 さんぺい
- 三法 さんぽう
そう、全部「3」なんです。
世の中、大事なことは3つに集約されるという「あるある」の通り、酒田五法でも「3」が大事な数字です。
では、個別のパターンを見ていきましょう。
三山

上昇と下落を3回繰り返して「4回目はもうないよね」というパターンが三山です。
高値のラインは天井と呼ばれ、これを抜くのは難しいということで「売り」のサインになります。
三山に似ているパターンが、スライド下の「三尊」です。
これは真ん中の天井が一番高い形で、人間の頭と肩になぞらえて「ヘッド&ショルダー」とも言われています。
三山と三尊は強力な売りのサインになりますが、出現頻度はわりとレアです。
その代わりに、山が2つある天井はよく登場し、これは「ダブルトップ」と呼ばれます。
値動きが反対の場合は「逆三山」「逆三尊」と呼ばれます。
グラフもまるっきり上下反転です。
※「逆三山」「逆山尊」が「三川」に分類される場合もありますが、当ブログでは三山の類型としています。
三川
数本のローソク足のパターンに焦点を当てる三川は、相場の転換点をみるときの参考になります。
酒田五法の中で最もバリエーションがあり、1回見ただけでは覚えられないと思います。
三川のベースになるのは2本のローソク足。
基本パターンにはこのようなものがあります。

星 | 大陽線/大陰線の後に寄引同事線が出現した状態。次のローソク足で相場が転換したことを示すシグナルが出ることがあります。 |
はらみ | 大陽線/大陰線の後に小陰線/小陽線が出現した状態。相場の転換期に出ることがありますが、シグナルとしては弱いので過信は禁物。 |
つつみ | 小陽線/小陰線の後に大陰線/大陽線が出現した状態。1本目のローソク足の動きを打ち消す、強めのシグナルです。 |
かぶせ | 大陽線が出た後に、それに覆い被さるように陰線が出現した状態。買いの勢いがピークを迎えたシグナルで、売り相場への転換を示唆しています。 |
たくり | 大陰線に続いて、長い下ヒゲのある陰線が出現した状態。下落相場の終盤で転換ポイントとなるパターンです。 |
これらをベースにしたシグナルたちはダイジェストでお届けします。

これは座学ではなかなか覚えられないので、実践で身に付けていくのがベターです。
三空

「空」とは、始値と前回の終値との間にずれが出ていることで、「窓」「ギャップ」と呼ばれることが多いです。
例えば前日終値が100円で、110円で始まった場合は「窓を開けて上昇」なんていう言われ方をします。
三空は、この窓に注目したパターン。
上昇相場で窓が3回開いたときは「三空踏み上げ」となり売りのシグナルが点灯。下落相場では「三空叩き込み」と呼ばれ、買いのチャンス到来というわけです。
窓が連続で開く超強気or弱気の相場で逆張りするには勇気がいりますが、成功するにはパターンを信じろ!というのが本間宗久からのメッセージなのでしょう。
なお、24時間ずっと相場が開いているFXでは窓が開きにくいため、基本的には株でみられるパターンになります。
三兵

連続した3本の陽線 or 陰線のパターンが三兵です。
下落相場の場合に陽線が3本連続で出現すると、「赤三兵」の完成。
相場が底を売ったときのシグナルで、そのまま買いについていくのが望ましいパターンです。
反対に、上昇相場の場合に陰線が3本連続して出現すると「三羽烏」と呼ばれるシグナルになります。
この場合は上昇相場が終わり、下落が続いていくことを示唆しています。
三兵の注意点としては、赤三兵っぽいパターンでも上ヒゲがついているケース。
このときは「赤三兵の先詰まり」と呼ばれ、値を戻すパワーがなくなったと判断されるため、下落シグナルに変わります。
三法

相場が動かないときは「レンジ相場」と呼ばれますが、上か下かの決着がつくまで様子見をする戦略があります。
「待つのも相場」という格言はよく知られていますが、三法はこの格言を象徴するローソク足のパターンです。
小康状態が続いた後に高値を上に抜けたときは「上げ三法」、安値を下に抜けたら「下げ三法」となり、抜けた方向についていけば良いとされています。
おわりに
今回は日本が誇るチャート分析法「酒田五法」を取り上げました。
株やFXなどを実践していると、「この形あったぞ!?」と思うパターンが大量に出てきます。
そのときに酒田五法に沿った投資判断をするのか、逆の判断をするのかは自分次第です。
この手法だけを参考にしていると裏切られることがありますが、そのときは酒田五法をレベルの高い「あるある」と考えて、次の投資判断への糧にしていただくことが重要です。