11月3日のアメリカ大統領選挙まであとわずか。
今月は現職のトランプ大統領が新型コロナに感染し、ホワイトハウスでクラスターが発生するという「オクトーバー・サプライズ」が起こりましたが、投資家にとっては選挙結果が相場に与える影響が気になるところです。
そこで、過去4回のアメリカ大統領選挙の前後でダウ平均株価、日経平均株価、ドル円相場がどう動いたかを検証してみました。
グラフの見方
・選挙年の10月初旬~12月末の範囲に設定しました
・10月初旬からの上昇率or下落率を見ています(金額ではありません)
2016年:ドナルド・トランプ vs ヒラリー・クリントン
事前の世論調査では圧倒的にヒラリー有利。
「私用メール問題」などスキャンダルも発覚しましたが、史上初となる女性大統領の誕生ムードにアメリカは沸いていました。
ところがフタを空けると、選挙を制したのは共和党の候補者選びの時点から「大穴」の位置付けだったトランプが勝利。
大統領選挙の歴史に残る逆転劇となりました。
この展開で、相場はどう動いたのでしょうか。

10月の日経、ドル円は緩やかに上昇基調。ダウはわずかにマイナスですが、ほぼ変わらずといった展開でした。
11月に入ると日経、ドル円は警戒からか上昇幅を縮め、反対にダウは値を戻して投票日を迎えました。
結果が出た直後は下に振れる場面があったものの、年末には3指数とも10月から大幅に上げてフィニッシュ。
最も変動幅の大きかったドル円は、実に16%近く値を上げました。
2016年は選挙をきっかけに上昇のパワーが解放されたような動きでしたが、注意していただきたいのは開票直後の短期の値動きです。
ダウのローソク足からは、選挙結果の「サプライズ」による相場の混乱が見て取れます。

1,000ドル近くの長~い下ヒゲ、お分かりいただけるでしょうか。
1~2カ月のスパンで見ればどうということはありませんが、高リスクのトレードをしていた人は、このヒゲが致命傷になったケースもあったことでしょう。
2016年のまとめはこちら。
選挙後に上昇パワー解放。開票後には荒い値動きも。
2012年:バラク・オバマ vs ミット・ロムニー
再選を狙うオバマ大統領と、マサチューセッツ州知事を務めたロムニーが激突。
一期目のフィーバーにはかげりが見えていたものの、結果はオバマが再選を果たしました。
いま振り返ると、当時の対立候補は忘れがちですね・・・。
さて、相場はこのように変動しました。

ダウは10~12月で見るとマイナスで終わっていますが、下落幅は約3.5%。
無風といっていい値動きです。
一方、日経とドル円は選挙後わずかに下落局面があったものの、年末にかけ力強く上昇しました。
この動きは基本的に大統領選とは無関係。
日本政府は後に、2012年11月が長く続いていた景気後退局面の「谷」であったと判定しているので、この上昇は国内事情によるものが大きいと思われます。
ということで、2012年のまとめです。
選挙の影響なし!?
2008年:バラク・オバマ vs ジョン・マケイン
ブッシュJr.の政権が終わりを迎え、黒人初の大統領を目指すオバマとベトナム戦争の英雄・マケインが激突。
結果は「Yes We Can」のキャッチーさも手伝い?オバマが歴史的な勝利を収めました。
相場展開は以下の通りです。

ダウ、日経、ドル円ともに、10月から年末にかけて下落トレンドが継続。
ドラマティックな選挙結果も相場の転換にはつながりませんでした。
2008年といえば、相場経験が長い方ならよく覚えておられると思います。
そう、あの「リーマンショック」です。
リーマン・ブラザーズの破綻はこの年の9月。
世界中のマネーが逆流を起こすという本気の金融危機に対しては、たとえアメリカであっても一国の選挙結果ごときがムードを覆すには至りませんでした。
今回作成したグラフを一見すると普通の下落チャートのように感じてしまいますが、3つのインデックスは実に13~22%もマイナスになっています。
当時を振り返るだけで身震いがする思いです(自分の資金は少額でしたが、虎の子だったので・・・)。
2008年のまとめはこちら。
リーマンショックの余波には抗えず
2004年:ジョージ・W・ブッシュ vs ジョン・マケイン
現職のブッシュ大統領によるイラク戦争・対テロ戦争の正当性が問われた選挙。
「強いアメリカ」の路線が支持され、ブッシュ再選が決まりました。
10月から年末までのダウ、日経、ドル円の推移はこちらです。

ダウと日経は10月後半まで下落基調で推移していたものの、選挙直前には10月初旬の水準に値を戻す展開。
選挙を機に下落トレンドは終了し、年末には+5%の水準でフィニッシュしました。
ドル円に関しては、選挙の影響はほぼ見られないような展開。
緩やかな下落トレンドが10月から12月末にかけて続きました。
2004年というと、日本は「失われた20年」の真っ只中であった一方、アメリカ経済は堅調という対照的な環境にありました。
日経はダウの上昇について行く形で似通ったパターンになっていますが、株式市場もまた、最近はあまり言われなくなった「アメリカがくしゃみをすれば日本が風邪をひく」という独自性のない位置付けだったのかもしれません(このときはまだ投資デビューしていなかったので、相場の空気感をよく知りません・・・)。
ということで、2004年のまとめはこちら。
選挙後に株価は弱い上昇トレンドに
おわりに
過去4回の大統領選挙前後での相場の動きを振り返りました。
リーマンショックの余波が続いていた2008年を例外とすると、年末には10月初旬に比べると上昇して終わっていました。
とはいえ、サンプルはたったの4個。
トランプ vs バイデンというワクワク感のないマッチアップ、そしてこれも異例のコロナバブルの中で予想をするのは難しいところ。
ただし、2016年のような投票日~結果判明の間は上下に激しく振られる展開になることが予想できます。
特にハイリスクの投資をしている方は、選挙前後に余力をしっかり確保しておくことを強くお勧めします。
【2020年10月30日追記】
【追加】2016年:ドル円、日経平均の値幅は?
直近では大統領選前の不透明感に加え、欧米でのコロナ第2波懸念が浮上。10月28日のダウ平均は1,000ドル近い下落を見せるなど、相場は神経質な展開になっています。
11月4日(水)には各メディアが開票速報を伝える予定になっているため、当日のドル円や日経平均も大きく変動する可能性があります。
本編では10月初旬からの価格変動率を紹介しましたが、ここでは値幅が分かるようローソク足に変更し、検証期間も選挙前後の2週間に短縮しています。
■ドル円

11月最初は3日連続で陰線となり、その後3日間で値を戻す展開。105円付近で開票を迎えています。
開票日は目まぐるしい値動き。102円割れから急速に上昇に転じ、最終的には106円に手が届く位置でフィニッシュしています。
その値幅は実に4円。ドル円としては相当に危なっかしい動きです。
■日経平均

選挙前後の値動きはドル円と同様の推移です。
注目すべきはやはり値幅。ヒゲも含めると1,000円をゆうに超えています。
いずれも通常の値幅からは大きく乖離した動き。
本編のまとめでも触れましたが、大事なことなので2回言います。
くれぐれも、余力はいつも以上に確保しておきましょう。